本記事は Lenovo Pro コミュニティ レジデンス ののらねこ!さんに執筆いただいたものとなります。
こちらの記事は後編となります。前編では、ThinkStation P3 Ultra の特徴や仕様、本体の外観を紹介しました。
内部
内部にアクセスするのは簡単で、本体背面にレバーがあり、これを引くだけでシャーシが引き出せる構造になっています。内部も徹底してツールレス設計になっており、工具が必要なのは CPU クーラーやシステムボード、無線LAN 用アンテナの着脱くらいです。ほとんどのケースでメンテナンスに一切工具を必要としないのは、さすが法人向けPC という印象。
(背面のレバーを引くだけで中身が出せる)
内部を見てみると、システムボード全体を活用して拡張性を担保しているのがわかります。 CPU がある表側には、CPU の隠れるカバー部分にもメモリスロットが2 つあり、下部にはビデオカードが収まるPCIe スロットがあります。このスロットにはアダプターが最初から付いており、ビデオカードを取り付ける際はこのアダプターを外し、ビデオカードにセットしてから戻します。スロット部分の空きブラケットもツールレスで外せるようになっています。
(内部の写真、CPU を冷やすファンは跳ね上げられる)
(内部の裏側はM.2 SSD を冷やすファンとヒートシンクが目立つ)
続いて背面に移ると、ファン付のヒートシンクに隠れたM.2 スロット2 本とメモリスロットが2 つ、無線LAN 用のM.2 スロット、そしてこちら側にもPCIe スロットがあります。CTO で選べる拡張カードはこちら側のPCIe スロットに入ると思われます。
なお、このPCIe スロットの上に被さる形で2.5 インチストレージを取り付けることもできますが、この場合はPCIe スロットが使えなくなります。
(SSD 用のヒートシンクには放熱用シリコンシートも)
M.2 SSD を冷却するファン(+ヒートシンク)もツールレスで外れるようになっていて、冷却用のシリコンシートも最初から準備されています。また、SSD 自体もネジでなくピンで固定できるタイプなのでやはり工具は不要です。
1.使用感
① 実際に触ってみると、本機は想像以上に使用感が良かったなと感じます。まず作業性が良いです。外資ブランドの法人向けPC は基本的にツールレス前提の設計が多いですが、本機もほとんどのケースで工具が必要ありません。これは保守エンジニアではないただの一般ユーザーにとっても都合がよく、パーツを交換増設する際にも役立ちます。こうした作業性は自作PC ジャンルの製品だとなかなか実現しがたく、特に最近メジャーになった中華ブランドの小型PC や、ベアボーンPC と比較しても圧倒的に優れる点と思います。
② 動かしてみても本機はサイズの割にファンの動作音が静かで、UEFI でファンを常時全開設定 (相当うるさい)にでもしない限り、普段の動作でファンの音が気になることはありません。各パーツを交換・増設する前も後もあまり変わらず、もちろんビデオカードを追加してもゲームやその他で酷使しない限り同じなので、職場でなく自宅で動かす場合でも心配は不要です。ただし、 CTO で選んだマシン構成によってはそうでない可能性はあります。
2.CTO ガイド
ThinkStation P3 Ultra は非常に魅力的なPC です。しかし正直なところ、個人でこのPC を買おうと思う人は多くないと思います。理由は明快で、高性能で小型だが高価だからです。
とはいえ、仮に買いたいと思った場合を想定してどうハードウェアを構成すべきか、以下に個人的な考えを書いておきます。なお下の記述は個人で買うことを前提としていますので、その辺はご了承ください。
※一部パーツを除き、個人でパーツを交換増設するのはメーカーの保証対象外になると思います ので、自己責任で行なってください。もし個人で以下を参考にされて何か問題が発生しても、メーカー及び筆者は一切の責任を取りません。
- CPU 本機は、いわゆるK 付きのCPU(例:i9-13900K)が選べますが、どうしても入れたい人以外は以下の理由で避けたほうがよいでしょう。
- 排熱の問題……高負荷時の消費電力が高く、排熱が厳しくなる可能性が高い。
- ビデオカードが入らなくなる……これらのCPU を選ぶとクーラーが専用品になり、巨大化するため一部ビデオカードが選べなくなります。 用途にもよりますが、ビデオカードを使うことが多いと思われるワークステーションでこれはもったいないです。実際はK 付きCPU を選んでも1 スロットのカード(NVIDIA T400/T1000)であれば同時に選べますが、おそらく裏側の拡張カード用PCIe スロット(×4 リンク)に収まるため性能が制限されます。
なのでCPU は要件的に問題がないなら、無印モデルか型番にT がついたCPU(高負荷時の消費電力が比較的少ない)を選ぶ方が無難と個人的には思います。ちなみに、パーツによっては後から自分で買うよりCTO で選んだ方が差額が安いことがあるので、構成を選ぶ際は価格をよく見比べておきましょう。
(筆者が購入した Core i5-13500T)
- メモリ
増設する際は、DDR5-5200 や5600 を選 んでも実際はその速度で動かないのでDDR5-4800 の品を選べばいいですし、その方が市価も安いです。なお 24GB/48GB のようなノンバイナリの容量品が動くかは未確認です。
(両面のメモリスロット計4 基を全て埋めた図)
- ストレージ
大抵のケースでNVMe SSD×2 構成になると思いますが、スロットの仕様上PCIe5.0 モデルと、最初からヒートシンクやファンがついているモデルを避ければ(ファン付きヒートシンクがあるので不要)、好きなものを選んでよいと思います。2.5 インチHDD をCTO で選ぶと背面のPCIe スロットを塞ぐので避けたいですが、どうしても必要ならCTO で選ばずに別途ThinkStation ストレージキット(4XF1M24243)を買い、これに含まれるブラケットとケーブルを利用した方がリーズナブルです。
ThinkStation 用のストレージキット。様々な機種用の部品が入っている
ところで、本機を買うとWindows 11 Pro がプリインストールでやってきますが、OS のライセンスキーはシステムボードに記録されており、買って即SSD を入れ替えてWindows 11 Pro をクリーンインストールしてもライセンス認証は自動で終わります。この辺りはメーカー製PC という感じがしますね。
- ビデオカード
特にRTX A2000(12GB)や、CTO では選べないがA2000 の6GB モデルは自分で買って増設した方がよい。
本来は装着時にネジ留めしたり、本体と固定するブラケットがついているようですが、自宅で使う分にはなくても問題はあまりないです。
(NVIDIA RTX A2000 を自力で追加)
なお、CTO で選べるRTX 4000 Ada SFF も一見自分で買った方が安いように見えますが、実際は必要ならCTO で入れた方が安い場合もありますので。追加の際には差額を見て比較してください。
- その他
PCIe スロットに入れる拡張カード類(NIC、USB 増設カード)は個人のニーズに合わせて選んでほしいですが、これらも大抵社外品を買った方が安いです。ただし、社外品の中にはP3 Ultra で使おうとするとポートが干渉するなどうまくいかないケースもありますのでご注意ください。
(一番左のLAN ポートが干渉して使えない例。純正が一番安心)
また、無線LAN はこの手のPC で使うか微妙ですが、必要な場合はCTO で入れた方が安価で確実です。
ディスプレイ
今回、P3 Ultra と一緒にThinkVision P27h-30 という27 インチディスプレイをお借りしました ので、合わせて紹介します。
本機の主な特徴は以下の通りです。
- 27 インチでWQHD 解像度(2560×1440)
- 狭額ベゼル(ベゼル幅2mm)
- HDMI/DisplayPort/Type-C 入力
- 高機能スタンド付
- KVM 機能により、2 台のPC でキーボード・マウスを共有可能
- PIP/PBP で1 画面にPC2 台の画面を同時表示可能
- USB ハブ機能(有線LAN 端子付)
(ThinkStation P3 Ultra の左側にあるのが今回の P27h-30)
一般的なオフィス向けディスプレイのカテゴリーとしてみると、本機の実売価格64,900 円はやや高価な方ですが、高機能スタンドやKVM 機能、 PIP/PBP に加えて有線LAN を含むUSB ハ ブ機能などに加え、ディスプレイの電源を入れると接続しているThinkPad の電源も一緒にオン できたりなど、同社製品と組み合わせて使う際に便利な機能を備えています。
仕様
本機の仕様は以下の通りです。
ThinkVision P27h-30 仕様
外観
最近のディスプレイら しく、画面に対してベゼルが非常に狭く(2mm 幅)スタイリッシュな印象があります。スタンドは本体にワンタッチで脱着でき、セットアップは簡単です。
スタンドは高さ、首振り、100mm×100mm のVESA マウントにも対応しており、ネジは最初から本体に付いています。出力端子はHDMI、DisplayPort に加えてUSB Type-C も備えていますが、例えば対応ノートパソコンであればType-C ケーブル1 本で画面出力、給電(100W)、USB ハブ機能をすべて使えます。ケーブル1 本で実現できるのは最近のディスプレイならよくある仕様ですが、100W までの 給電に対応するディスプレイは多くないので貴重な存在です。また、ディスプレイなのに有線 LAN 端子があり、USB ハブ経由で利用できます。最近のノートパソコンは有線LAN 端子を持たないものも多いですが、本機を使うことでそれを補うこともできます。
なかなか多機能な本機ですが、意外な落とし穴として実は映像出力用のHDMI やDisplayPort ケ ーブルが付属しません。ですのでこれらを使いたい場合は別途準備しなければならず、ここは明確に不便を感じました。ただし、USB ケーブルは付属します。
ディスプレイ設定
ディスプレイの設定は背面のボタン操作で変更できますが、ボタンを操作するよりも専用アプリを使った方が楽で便利です。Lenovo Display Control Center というアプリがあり、ディスプレイと接続しているPC にインストールすればほとんどの設定をPC から行なえます。
(Lenovo Display Controlo Center の画面)
このアプリからは、入力切替や画面の明るさ・表示モードの設定だけでなくウインドウの配置変更、登録したアプリ毎に表示モードを切替、また変わった機能だと画面に様々な用紙サイズを実寸表示するものもあります。特に最後のものは印刷のアシストとして使えそうです。
(選んだ用紙サイズを画面に表示できる印刷アシスタント)
最後に
今回、ThinkStation P3 Ultra とThinkVision P27h-30 を紹介しました。
特にP3 Ultra は、外観からは想像できないほどの拡張性を備えているうえに実性能も上々、動かしても十分静かと、小型で高性能なPC を夢見る人には最高の選択肢の1つではないかと思いました。どうしても高価ではありますが、サイズを小さくしても性能は妥協したくないという方には最適な選択肢の1つではないで しょうか。
P27h-30 は、このサイズ・解像度に対してはやや高価な印象こそありますが、特に現代の ThinkPad をお使いのユーザーさんには非常にマッチした機能を多く持っており、合わせて使うことで利便性をより高めることができそうと感じました。
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