中小企業に役立つ損害保険!検討すべき保険の種類を抱えているリスクをもとに紹介

中小企業を経営するにあたって、いつでも順風満帆にいくとは限りません。何か起きたときの備えになるのが、損害保険です。

一方で、損害保険には数多くの種類があるので、どれに加入すればいいのか迷われる経営者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、中小企業の経営者に向けて、加入を検討すべき損害保険の種類について解説します。今後降りかかる可能性のあるリスクに備えるために、ぜひ参考にしてみてください。

中小企業が抱える経営的なリスク4つ

中小企業が保険を検討する際は、以下7つの観点から見る必要があります。

  • 企業財産
  • 事業中断・利益減少
  • 賠償責任
  • 社用車
  • 経営者・役員
  • 従業員

本記事では上記の中から、損害保険にかかわりの深い上4つの要素について、それぞれ解説します。

企業財産

企業努力によって積み上げてきた財産は、火災事故や台風などの災害によって脅かされることがあります。

台風や大雨などの災害はいつ来てもおかしくないので、事前の対策は必須です。一方で、不可抗力によってもたらされることも多いので、損害を完全に防ぐのは難しいと言えるでしょう。

事業中断・利益減少

事故や災害によって損害を受けるだけでなく、休業を余儀なくされ、利益が減少してしまう事態も十分に考えられます。事故や災害に限らず、サイバー攻撃や情報システム障害など人的な要因により事業中断を余儀なくされた事例も少なくありません。

少し古いデータですが、KPMGコンサルティング株式会社が2014年に実施した「事業継続マネジメント(BCM)サーベイ2014」では、当年に事業を中断した企業は8%と公表しています。そして、事業中断の原因を見てみると「風水害」と「停電」が多いことから、不可抗力なことが原因で止められていることもわかっています。

事業中断の原因割合地震12%風水害27%火災8%停電31%感染症のまん延4%人的ミス4%サイバー攻撃4%情報システム障害15%その他27%

また、先述した災害やサイバー攻撃以外の要因で事業中断した企業も一定数あることから、全企業が備えるべきと言えるでしょう。

賠償責任

事業を遂行する中で第三者に対して経済的損失を被らせてしまった場合、損害賠償や訴訟にかかる負担が発生します。実際に企業に賠償責任が発生する事例を、いくつか紹介します。

  • 生産・販売した食料品が下人で食中毒が発生した
  • サイバー攻撃を受けて個人情報が漏洩した
  • 店舗内で火災が発生し、顧客がケガをした
  • 預かっていた顧客の荷物が盗難に遭った

賠償責任の規模と金額によっては、数千万~億単位になることも、少なくありません。

とくに中小企業は大企業ほど経営基盤がしっかりしていないことから、損害賠償に見舞われると経営難に陥ることもあります。

社用車

事業で自動車を利用する企業には、自動車事故を引き起こすこともあります。社用車の走行距離や保有している台数に比例して、事故に遭う確率は高くなると言えるでしょう。

こちらもやや古いですが平成22年に国土交通省が実施した調査によると、交通事故の件数は72.5万件のうち、事業用自動車によるものは5.1万件。割合にして7%程度ですが、交通事故がもたらす損害を考えると、かなり高い数値です。

【参考】自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(平成 22 年度)|国土交通省自動車交通局

従業員が業務中に事故を起こした場合、会社も責任を負わなければなりません。自動車事故はいつ、誰が起こしてもおかしくないので、万が一の備えが求められます。

中小企業におすすめの損害保険7つ

中小企業が加入を検討すべき、おすすめの損害保険を7つ紹介します。

  • 火災保険
  • 休業補償保険
  • 賠償責任保険
  • 生産物賠償責任保険(PL法)
  • 労災保険
  • 個人情報漏洩保険
  • 自動車保険

それぞれの特徴を一つずつ見ていきましょう。

すでにあらゆる損害保険に加入されている方も、おさらいも兼ねてご一読ください。

1. 火災保険

火災保険は「火災」と名前が付いていますが、実際には火災事故に限らず落雷や風災、水災など、あらゆる災害が原因で損害を受けたときに補償を受けられる保険です。一般家庭でも多くの世帯で契約されている損害保険の一つです。

法人の場合は設備などの高額な物を備えているので、被害を受けると事業撤退を考えないといけないくらいの損害額になることもあるでしょう。

また、プランによっては盗難被害により補償を受けられることもあるので、小売店などにとくにおすすめです。

あらゆる災害に備えられるので、リスクヘッジのために加入すべき損害保険の一つと言えます。

2. 休業補償保険

休業補償保険は、火災や水災などの事故によって建物や設備に損害が生じたことが原因で、休業した場合に支払われる保険金です。利益損失額などに応じて、支払い金額は決められます。

先述の通り、近年では災害に限らずあらゆる理由から事業の中断を余儀なくされます。そのため、万が一事業を中断する事態に備えて、火災保険と併せて加入を検討する余地がある損害保険です。

なお、休業補償保険に加入する際は、補償の対象となる原因を事前に確認しておきましょう。

3. 賠償責任保険

賠償責任保険とは、被保険者が他人から法律上の損害賠償責任を負ったときに支払われる保険金です。賠償金に限らず、争訟にあたってかかった費用も対象となります。

注意点として、以下に該当する場合は保険金が支払われない可能性があるので、注意が必要です。

  • 被保険者の故意によって生じた賠償責任
  • 地震・噴火・津波などの災害に起因する賠償責任
    ⇒火災保険で対応

また、賠償責任保険は対象事業者によって、以下のように細かく制度が設計されています。

  • 生産物賠償責任保険
  • 施設賠償責任保険
  • 請負業者賠償責任保険
  • 個人情報漏洩保険
  • サイバー保険

上記のうち、生産物賠償責任保険と個人情報漏洩保険については後述しているので、ぜひご参考ください。

4. 生産物賠償責任保険(PL保険)

賠償責任保険の中で、製造・販売した商品が原因で賠償責任が発生したときに適用されるのが、生産物賠償責任保険です。

注意点として、まず日本国内で発生した事故のみが対象となります。海外で発生した事故については別途「海外PL保険」があるので、海外展開している企業はそちらをご利用ください。

また賠償責任の原因が故意または重大な過失により製造・販売・提供したものや、不当表示・虚偽表示をした物が原因の場合も、対象外となります。適用されるためには、日ごろから法律を守りながら品質管理をしっかり行っている体制を構築する必要があると言えます。

5. 個人情報漏洩保険

個人情報漏洩保険も損害賠償責任保険の一種で、顧客の個人情報が漏洩した際に生じた損害賠償を補償する保険です。

保険のプランによっては、補償だけでなく被害者やマスコミへ適切な対応をアドバイスしてくれる、危機管理コンサルティングを案内してくれることもあります。

被害者への対応を誤ると、さらに企業の信用を落としてしまいかねません。被害者や世間への不信感を少しでも軽くするためにも、補償内容には危機管理コンサルティングを含めたいところです。

6. 労災保険

労災保険は公的保険にもありますが、カバーできない範囲をさらに上乗せして補償してくれる民間の保険会社が提供しているプランもあります。労災保険とは、労働者の業務上および通勤によりケガをした際に必要な給付をしてくれる制度のことです。

労災保険の補償範囲となるのは、以下の3種類です。

  • 業務災害
  • 複数業務要因災害
  • 通勤災害

最低限は政府からも支給されるので、民間の労災保険は優先度は低めでも大丈夫です。

7. 自動車保険

私用車と同じように、社用車も自動車保険には必ず加入しておきましょう。自動車にも自賠責保険という加入義務がある保険がありますが、事故を起こしたとしても、カバーしきることはほぼ不可能です。

補償内容は私用車と同様に、以下の種類があります。

  • 対人補償
  • 対物補償
  • 人身傷害保険
  • 車両保険

社用車の場合は不特定多数の人が運転しても補償が適用されるので、私用車の自動車保険よりも保険料はやや高めとなっています。

なお、車両保険については地震・噴火、および津波が原因で生じた被害については基本的に補償対象外となるので、注意が必要です。保険会社によっては特約で地震などの災害でも適用が可能になる場合があるので、各自でご確認ください。

まとめ

経営基盤が盤石とは言えない中小企業にとって、何らかの損害を被ると、今後の経営に大きな支障をきたしてしまいかねません。万が一、損害を被ったときに備えて損害保険に加入するのがおすすめです。

しかし、損害保険にはさまざまな種類があるので、どの保険に加入すべきか迷われる経営者も多いでしょう。最低でも、以下の損害保険は検討しておきましょう。

  • 火災保険
  • 休業補償保険
  • 賠償責任保険
  • 生産物賠償責任保険(PL法)
  • 個人情報漏洩保険
  • 労災保険
  • 自動車保険

とくに近年では、自然災害の規模が大きくなっていることから、想像を上回る被害を受けてもおかしくありません。本記事を機に、損害保険の加入を改めて検討してみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なお、本記事より3回に分けて、中小企業の経営に役立つコンテンツを投稿していきます。次回は採用活動、次々回は節税術を解説する予定なので、ぜひ今後の投稿もご参考いただければと思います!