小規模事業者持続化補助金の概要・申請方法と採択されるためのポイントを解説!

小規模事業者が申請できる代表的な補助金制度が「小規模事業者持続化補助金」です。賃金引き上げやインボイス制度への適用などの追加条件を満たせば、さらに上限を引き上げられるので、注目すべき制度です。

一方で、小規模事業者持続化補助金の対象外となる用途もあるので、申請前に押さえておかなければなりません。本記事では、小規模事業者持続化補助金の概要や申込み方法について解説します。

※本記事で紹介している制度は2023年4月25日現在の情報です

小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金の概要と対象者について、詳しく解説します。

概要

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が自ら策定した経営計画に対し、商工会・商工会議所が支援する補助金制度のことです。最大250万円の補助金を受給できますが、あらゆる条件を満たさなければなりません。

対象者

小規模事業者持続化補助金の対象となる事業者は、常時使用する従業員数によって決められていますが、業種によって異なります。

業種常時使用する従業員数商業・サービス業
(宿泊業・娯楽業除く)5人以下宿泊業・娯楽業20人以下製造業その他20人以下

【参考】小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック

ただし、以下に該当する事業者は対象外となるので、他の補助金制度をご検討ください。

  • 医師・歯科医師・助産師
  • 個人農業者
  • 協同組合等の組合
  • 一般・公益社団法人
  • 一般・公益財団法人
  • 医療法人
  • 宗教法人
  • 学校法人
  • 農事組合法人
  • 社会福祉法人
  • 申請時点で開業していない創業予定者

小規模事業者持続化補助金の補助率・金額

小規模事業者持続化補助金はそれぞれ枠が定められており、以下のように補助率および金額が決められています。

引用:「小規模事業者持続化補助金」が拡充されます

通常枠をオーソドックスとして、プラスで条件を満たした場合に特別枠が適用されるイメージです。

ここからは、小規模事業者持続化補助金の特別枠について解説します。

特別枠

特別枠は以下4種類の枠があり、条件を満たすと適用されます。

  • 賃金引上げ枠
    ⇒ 事業場内の最低賃金を地域別最低賃金よりも30円以上も上回っている
  • 卒業枠
    ⇒ 小規模事業者と定義する従業員数を超えて規模を拡大している
  • 後継者支援枠
    ⇒ 跡継ぎ甲子園のファイナリストとなった事業者向け
  • 創業枠
    ⇒ 過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受けて創業した

補助率は通常枠と同じ2/3ですが、賃金引上げ枠の赤字事業者に限り、3/4に引き上げられます。また、補助上限額は通常枠よりも高額な200万円に引き上げられることも、特別枠の特徴です。

インボイス特例の適用

免税事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者は「インボイス特例」を適用できます。

通常枠・特別枠ともに補助上限額が上乗せされます。特別枠でインボイス特例が認められれば、最大250万円の補助金を受給できます。

インボイス制度について詳しくは「インボイス制度が個人事業主にもたらす影響とは?施行されるまでにやるべきことを解説」を参考にしてみてください。適格請求書発行事業者への登録を迷っている方に向けての内容となっています。

小規模事業者持続化補助金の申請方法

小規模事業者持続化補助金を申請してから入金されるまでの流れは、以下のとおりです。

  1. 申請書類を作成して提出
  2. 提出書類に基づいて審査を受ける
  3. 採択・交付の決定
  4. 提出書類に記載した事業の実施
  5. 実績報告書の提出
  6. 確定検査・補助金額の確定
  7. 補助金の請求
  8. 補助金の入金
  9. 「事業効果および賃金引上げ等状況報告」の提出

申請書類の締め切りから実績報告書の提出までで11ヶ月ほどの期間を要するので、余裕をもって準備に取り掛かりましょう。

また、補助金を受け取るのは計画した事業を実施した後になるので、それまでの資金繰りも想定しておかなければなりません。

以下の表にて、2023年5月以降に決められている小規模事業者持続化補助金のスケジュールを掲載しておきます。

第12回第13回申請受付締切日2023年6月1日(木)2023年9月7日(木)事業支援計画書交付の受付締切原則2023年5月25日(木)原則2023年8月31日(木)事業実施期間交付決定日~2024年4月30日(火)交付決定日~2024年7月31日(水)実績報告書の提出2024年5月10日(金)2024年8月10日(土)

【参考】小規模事業者持続化補助金(一般型)とは

小規模事業者持続化補助金の補助対象となる経費

小規模事業者持続化補助金は、あらかじめ補助対象の範囲が決められています。万が一、申請書類の中に対象外となる経費が含まれていた場合、事務局から連絡があります。

補助対象となる経費は、以下のとおりです。

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • 展示会等出展費
  • 旅費
  • 開発費
  • 資料購入費
  • 雑役務費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

【参考】小規模事業者持続化補助金<一般型>第12回公募 公募要領

なお、項目ごとに対象・対象外となる支出が明確に線引きされているので、事前に確認しておきましょう。

小規模事業者持続化補助金に採択されるためのポイント

小規模事業者持続化補助金は、申請書を提出すれば必ず採択されるわけではありません。実際に中小企業庁の発表によれば、2022年12月が申請締め切り日であった第10回の申請件数は9844件に対し、採択件数は6248件でした。

このことから、しっかり準備しなければ審査を通過するのは難しいと言えます。ここからは、小規模事業者持続化補助金に採択されるために押さえるべきポイントを紹介します。

余裕をもって準備する

スケジュールには余裕をもって準備しましょう。申請締め切り日までに提出すべき書類は多いため、計画的に取り組まないと間に合わないことも十分に考えられます。

提出書類が比較的少ない通常枠の場合でも、これだけの書類を用意しなければなりません。

▼提出が必要な書類

  • 持続化補助金事業にかかる申請書
  • 経営計画書兼補助事業計画書①
  • 補助事業計画書②
  • 小規模事業者持続化補助金にかかる事業支援計画書
  • 小規模事業者持続化補助金交付申請書
  • 宣誓・同意書
  • 決算書類(法人・個人)
  • 開業届
    ※決算期を一度も迎えていない事業者

【参考】小規模事業者持続化補助金<一般型>第12回受付締切分以降チェックリスト

特別枠やインボイス特例を適用する場合、上記に加えてさらに提出書類が求められます。

計画書については一朝一夕では作成できるものではないので、提出期日よりも前もって取り組むようにしましょう。

加点項目を押さえる

小規模事業者持続化補助金の審査に設けられている加点項目を、できる限り押さえておきましょう。

加点項目には「重点政策加点」と「政策加点」の2種類があり、それぞれ1種類ずつ選択できます。補助金を受けようと考えている事業の中で当てはまる項目を探してみてください。

重点政策加点

  • 赤字賃上げ加点
    ⇒ 赤字である事業者が賃金引上げを実施する場合
  • 事業環境変化加点
    ⇒ ウクライナ情勢や原油価格等の高騰による影響を受けている
  • 東日本大震災加点
    ⇒ 福島第一原子力発電所による被害を受けた水産加工業者等が対象

政策加点

  • パワーアップ型加点
    ⇒ 地域資源を活用して付加価値向上を図る、または地域の課題解決や暮らしの実需に答えるサービスを提供する事業者が対象
  • 経営力向上計画加点
    ⇒ 中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている
  • 事業承継加点
    ⇒ 代表者の年齢が満60歳以上で、かつ後継者候補が補助事業を中心になって行う
  • 過疎地域加点
    ⇒ 特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展に繋がる取り組みを行う

【参考】小規模事業者持続化補助金ガイドブック

ソフトウェア・システム導入に充てたいならIT導入補助金がおすすめ

小規模事業者持続化補助金は事業を拡大するにあたっておすすめな補助金制度です。しかし対象外となる支出が明確に決められていおり、一例としてソフトウェアやシステムの導入では認められません。

事業の生産性向上のためにソフトウェア・システムを導入したい事業者は、IT導入補助金がおすすめです。

IT導入補助金は、常時雇用している従業員数が5~20人以下の事業者を対象に、ソフトウェアやシステムを導入するのに活用できる補助金制度です。

「デジタル化基盤導入枠」を選べば、ソフトウェアだけでなくパソコンやタブレットなどのハードウェアも対象として認められます。

IT導入補助金について詳しくは「IT導入補助金とは?概要と対象事業者、申請方法を解説」の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

まとめ

小規模事業者持続化補助金は、事業者自らが策定した経営計画に対し、商工会議所が支援してくれる補助金制度です。

常時雇用人数が5~20人以下であれば、補助上限額50~250万円を受給できます。

ただし、採択されるためには事前の審査に通過しなければならず、提出すべき書類も非常に多いです。そのため、前もって取り組んでおかないと書類作成に着手できず、審査に通過できない恐れがあります。

また、受給できるのは事前に計画した事業を実施した後になるので、遂行するための資金も確保しておかなければなりません。

今後事業を拡大していきたい事業者にはおすすめの補助金制度なので、ぜひ活用してみてください。