環境問題や多様な社会の実現に向けて掲げられた「SDGs」という単語を耳にしたことがある方は、多いのではないでしょうか。とはいえ「SDGsはうちには関係ない」と思ってスルーしていると、せっかくのチャンスに乗り遅れる恐れがあります。
結論から言うと、中小企業こそSDGsを理解し、ビジネスに取り入れるように努めるべきです。本記事では、中小企業がSDGsに取り組むべき理由について、メリットと併せて解説します。
中小企業がSDGsに取り組むべき理由3選
中小企業がSDGsに取り組むべき理由は、以下の3つです。
- ビジネスチャンスを失う可能性がある
- サプライチェーンから外されるリスクがある
- 人材の確保・定着ができない
ひとつずつ見ていきましょう。
1. ビジネスチャンスを失う可能性がある
SDGsは国際連合が達成すべき目標として掲げていることから、世界中の企業が実現するためにあらゆる事業を展開しています。逆に言うと、SDGsについて理解していないとビジネスチャンスを失うことは、十分にあり得る話です。
実際にSDGsがきっかけで新たなビジネスチャンスを掴んでいる企業の事例は、数多くあります。
今からでもSDGsに関心を持つようにすれば、まだ開拓されていない分野でビジネスチャンスを掴めるかもしれません。事業計画を立てるうえでの参考に、SDGsについて調べてみるのもいいでしょう。
2. サプライチェーンから外されるリスクがある
近年では大手企業を中心にSDGsに取り組んでいる企業が増えてきており、サプライチェーンはとくに重要視されています。SDGsに取り組んでいない企業は、今後サプライチェーンから外されるケースは十分にあり得る話です。
逆に言うと、SDGsに取り組むことで、いきなり取引先を失うリスクを抑えられると言えます。
3. 人材の確保・定着ができない
SDGsの目標のひとつである「働きがいも経済成長も」を守れないと、人材を確保できず、また既存従業員の流出にもつながる恐れがあります。人材を確保できなければ、当然ながら事業を展開できません。
人材を確保し、定着させる要素のひとつが働きがいをもって働ける環境であること。以下の要因が社内に存在すると、働きがいを大きく落としてしまいます。
- 長時間労働
- セクハラ・パワハラ
- 低待遇(収入・福利厚生など)
働きがいを持てる労働環境を整えられれば、人材の確保・定着ができるだけでなく、生産性の向上にもつながります。
中小企業がSDGsに取り組むメリット6選
中小企業がSDGsに取り組むメリットは、以下の6つです。
- コスト削減につながる
- 人材不足解消に繋がる
- 資金調達のハードルが下がる
- 新規ビジネスのアイデアにつながる
- 売上アップにつながる
- 企業のイメージアップになる
順番に見ていきましょう。
1. コスト削減につながる
SDGsの大きなテーマのひとつが環境問題。光熱費や原材料の使用量を従来よりも抑えられれば、コスト削減につながります。
コスト削減に取り組む中で、製造工程の効率化や最適化が求められることもあります。結果的に、従業員の働きやすさにもつながり、人件費の抑制を実現できることも見込めるでしょう。
2. 人材不足解消につながる
従業員にとって働きやすい環境作りに努めれば人材が定着し、人材不足の解消につながります。企業が人材不足に陥る最も大きな要因が、長時間労働や低賃金など労働環境が悪いことです。
従業員が働きやすくするためには労働環境の改善は必須で、退職率を下げられる可能性があります。また、SDGsへの取り組みを発信することで企業イメージのアップにつながり、新規採用時に応募を増やせることも期待できます。
3. 資金調達のハードルが下がる
近年では投資家の間では「ESG投資」が活発になっており、SDGsを取り入れている企業は資金調達がしやすくなっています。ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせたもの。
資金調達が容易ではない中小企業にとって、SDGsがきっかけで思わぬ投資家から融資を受けられる可能性があります。
また、自治体によってはSDGsビジネスに必要な資金調達を支援しているところもあるので、チェックしてみてください。実際に大阪府では「SDGsビジネス支援資金」として限度額2億円、うち8000万円は無担保で融資を受けられる制度を実施しています。
【参考】SDGsビジネスに必要な資金調達を支援しています(大阪府制度融資「SDGsビジネス支援資金」)|大 阪府
4. 新規ビジネスのアイデアにつながる
SDGsでは17個の目標が設定されているので、あらゆる角度から新規ビジネスのアイデアにつなげられます。実際にどのような事業でも、SDGsに対して何かしらの接点を持つことができます。
また、各目標を解決するためには新たな技術やビジネスモデルが必要となります。そのため、SDGsをコンセプトに事業の見直しをしてみると、普通では思いつかないビジネスを展開するきっかけとなるかもしれません。
5. 売上アップにつながる
SDGsがきっかけで新規市場に着目し、開拓に成功すれば売上アップが期待できます。新規市場はまだ競合が少ない状態であるので、売上に直結しやすいです。
また、既存事業でも開発プロセスを見直して効率化を図ることでも、結果的に売上のアップにつなげられるでしょう。
6. 企業のイメージアップになる
商品・サービスを開発する工程におけるSDGsの取り組み内容を発信すれば、企業のイメージアップにつながることが期待できます。SDGsを押し出さなくても、労働環境のよさをアピールしたり、従業員の健康面に配慮した福利厚生を用意したりするだけでも効果的です。
企業の取り組みを発信するうえでの注意点は、あまり誇張し過ぎないことです。企業によっては、SDGs取り組んでいると偽って発信する「SDGsウォッシュ」が問題となっています。
世間 に発覚してしまうと、却ってイメージダウンにつながりかねません。発信する際は、自社の取り組みを誇張しないようにして、外からみてSDGsウォッシュと思われないように気を付けましょう。
SDGsの取り組み方6ステップ
SDGsのメリットを理解したところで「取り組み方がわからない」という経営者も多いでしょう。中小企業がSDGsに取り組むまでのステップは、以下のとおりです。
- SDGsへの理解を深める
- 活動体制を構築する
- 自社の課題を洗い出す
- 目標を設定する
- 事業に取り入れる
- 取り組みを発信する
順番に見ていきましょう。
1. SDGsへの理解を深める
まずはSDGsへの理解を深めるところから始めなければなりません。
2022年1月の電通の調査によれば、SDGsの認知度は86%と比較的高い傾向が見られます。一方で、内容まで理解しているかの問いに対する回答は3割程度と、認知度と大きな差があります。
【参考】電通、第5回「SDGsに関する生活者調査」を実施|dentsu
ビジネスに活かそうと思った場合、内容まで理解していなければなりません。外部から講師を呼んで研修してもらったり、社内で勉強会を開催したりして、SDGsへの理解を深めることが大切です。
2. 活動体制を構築する
SDGsを取り入れ、社内に浸透させるためには体制を構築する必要があります。まずは、SDGsの担当者を決めるところから始めましょう。
担当者を中心にSDGsへの活動を進めれば、指揮系統が明確になり、向かうべき方向性がわかりやすくなります。
規模が小さい企業の場合は社長自らが担当者となることで、本気で取り組むことを従業員へアピールできます。
担当者を従業員から任命する際は、通常の業務に支障のない範囲で活動内容を決めるようにしましょう。業務に支障が出てしまったり負担が増えたりしてしまっては、本末転倒です。
3. 自社の課題を洗い出す
担当者を交えて、自社の課題を洗い出しましょう。SDGsへのアプローチの仕方を見つける効果的な方法は、自社の課題と照らし合わせながら取り組むことです。
課題を把握できないことには、この後の目標設定ができなくなってしまいます。
4. 目標を設定する
洗い出した課題に基づいて、目標を設定します。目標設定で大切なのは、数字を 入れて具体化させることです。
SDGsに沿った目標の一例として「従来製品の〇%のコストカット」「生産性を維持しながら〇%の光熱費削減」などが挙げられます。
5. 事業に取り入れる
設定した目標の実現に向けて、事業に取り入れましょう。
実行前の時点では、従業員間での認識に大なり小なりズレが生じています。ズレがあるまま進めてしまうと従業員間で衝突が起き、進捗が遅れる恐れがあります。
そのため、担当者が中心になってSDGsに取り組む目的や効果を確認し、社内での認識を統一させなければなりません。従業員全員の認識を統一させられれば、目標に向かってスムーズに進められるようになります。
6. 取り組みを発信する
社内でSDGsに向けて取り組んでいることを、SNSや会社HPなどで発信しましょう。発信内容は実現したことだけでなく、そこに至るまでのプロセスも取り上げることが大切です。
社外に発信することで、見た人から意見をもらえることもあります。貴重な意見なので参考にしつつ、必要に応じて取り入れていくと効果的です。
発信する過程でイメージアップにつながることもあり、新たな取引先が見つかったり、求人への応募数が増えたりといった効果が期待できます。
まとめ
ビジネスマンの中にはSDGsは自分の仕事とは関係ないと考えている人もいますが、決してそんなことはありません。むしろ、SDGsがきっかけで新たなビジネスチャンスにつながる可能性があるので、関心を持つようにしましょう。
SDGsで達成すべき目標は多岐に渡るので、無関係の人はいないと言っても過言ではありません。ぜひ本記事を機に、SDGsを自身の事業に取り入れる方法を模索してみてはいかがでしょうか。