従業員のデスクワークの生産性と快適性を最大化するために企業は何を成すべきか──。
このテーマの下、レノボでは、アニメーション・実写映画の企画・制作やVFX(ヴィジュアルエフェクト)制作を手がける白組のキーパーソンと、高機能ワークチェアのセレクトショップ「WORKAHOLIC (ワーカホリック)」を運営するEviro社のキーパーソンをお招きしてディスカッションを行いました。そのエッセンスを報告します。
働く環境をより快適にする一手を探して
コロナ禍を境に自宅で仕事をこなすビジネスパーソンが増えたことで、改めてクローズアップされている問題が、長時間のデスクワークを快適にかつ効率的にこなせる環境をいかにして築くかです。
1日の労働時間を8時間とするならば、デスクワーク中心で働く人は1日(ワークデイ)の約3分の1を椅子に座り、机の上のPC、ないしはワークステーションと向き合って過ごしている計算になります。仮に、その環境が快適なものでなければ、労働生産性が低下するだけではなく、疲労とストレスの蓄積へとつながり、健康を害するリ スクすらあります。
もちろん、この問題は自宅での働く環境に限った話ではなく、オフィスでの働く環境についても同様に言えることです。
ならば、従業員のデスクワークの生産性と快適性を最大化するために企業は何を成すべきなのでしょうか──。
今回レノボが主催したディスカッションは、その疑問への1つの答えを見出すためのものです。ディスカッションには、日本を代表する映像作品を数多く世に送り出してきた白組の山崎 貴監督と調布スタジオ制作第二部長で同スタジオにおける働く環境の改革を主導する高橋正紀氏をお招きしたほか、Eviro社のWORKAHOLIC事業部門でMDを担当する伊藤僚範氏にも参加いただき、レノボ・ジャパンWS&クライアントAI事業部の高木孝之がモデレーターを務めました。
デスクワークの快適性を巡り、熱を帯びた4人のディスカッション── 全容を報告します。
リモートワーク時代からこそオフィスの快適さを追求したい
レノボ・高木:まずは白組のお二人にお話を伺いたいのですが。白組では調布スタジオで働く環境の改革に取り組まれ、デスクワークの快適性を追求しているとお聞きしました。その取り組みの必要性・重要性について確認させてください。
山崎 貴氏
株式会社白組
監督・脚本・ビジュアルデザイン
白組・山崎氏(以下、敬称略):デスクワークの快適性を追求することは、私たちのようにCGを使った映像制作を手掛ける人間にとって非常に大切なことです。
私も含めて映像制作に携わるアーティストたちは、働く時間のほとんどをデスクで過ごしています。ほぼ全員が自分の好きなことを仕事にしているので、集中し始めると文字どおり仕事に没頭して、長い時間、デスクから動こうともしません。
働く時間というのは日中の多くの時間を占めていますから、極端に言えば、私たちアーティストは人生の多くの時間をデスクで過ごしていると言えるわけです。
したがって、その場所は最高に居心地の良いところであるのが理想で、会社としては、可能な限り働きやすい環境をスタッフに提供し、それぞれの働く意欲と生産性を高める必要があると考えています。
高木 孝之
レノボ・ジャパン合同会社
WS & クライアントAI 事業部
シニア・プロダクトマネージャー
レノボ・高木:コロナ禍の影響もあり、映像制作の現場でもリモートワークを志向する方が増えていると思います。その中でオフィスの働きやす さを追求する特別な理由は何なのでしょうか。
白組・高橋氏(以下、敬称略):リモートワークの時代だからこそ、オフィスの働きやすさに徹底的にこだわりたいというのが私たちの考えです。
レノボ・高木:それはどういうことでしょうか。
白組・山崎:映像制作はチームで1つの作品を仕上げていく作業です。その制作の過程では、メンバーの日々の仕事をリーダーがワークステーションの画面でリアルタイムにチェックしながら、指示を出すというやり取りが頻繁に発生します。
このような共同作業・コミュニケーションをチームのメンバーがリモートに分散している状態で行うのは至難です。要するに、チームの全員が集まって仕事をしていなければ作業はなかなか前に進まず、パフォーマンスは上がっていかないわけです。
高橋 正紀氏
株式会社白組
調布スタジオ 制作第二部長VFX Director /
Senior Computer Graphics Artist
白組・高橋:ただし、リモートワーク時代の今日において、単にオフィスワークを強要するのでは、スタッフの働く意欲は高まらず、チームのパフォーマンスは逆に低下してしまうおそれがあります。
それを避けるためには、オフィスをスタッフにとっ て最も快適に働ける場所にすること、言い換えれば、他のどんな場所よりも、オフィスで仕事をするのが快適で楽しいと感じさせるようにすることが必要になるのです。
レノボ・高木:なるほど。そのようにして従業員の方が快適に働ける環境を提供し、働く意欲を高めることは、リモートワークを推進するしないにかかわらず、とても重要なことだと私も思います。
働く環境が快適であれば、組織の生産性は上がりますし、離職率も低く抑えられますから。
一説によれば、従業員に離職されると後継者育成にかけたコストを含めて、その従業員の年収相当のコストが発生するとされています。これは企業にとって大きな損失で、働きやすい環境を作り、人員の退職を防ぐことは経営的にも重要な取り組みと言い切れます。
Eviro社は、レノボと同じく快適に働くためのツールを提供する立場にありますが、働く環境を整備することの大切さについて、どのようにとらえておられますか。
伊藤 僚範氏
Eviro 株式会社
WORKAHOLIC 事業 MD 担当
Eviro社・伊藤氏(以下、敬称略):白組のようにクリエイティブ系の企業は特にそうだと思いますが、会社の従業員のほとんどは高いモチベーションを持って仕事を始められるはずです。
そのモチベーションを維持し、パフォーマンスを高いレベルで保つうえでは、組織内の人間関係が良好であることが不可欠でしょうし、快適に働ける環境を用意して、従業員に「自分は会社から大切にされている」と感じさせることも重要だと思います。その観点から企業が重視すべきことの1つが従業員の「健康」の維持であるというのが、私たちEviro社の考え方であり、高機能ワークチェアのセレクトショップ(WORKAHOLIC)を運営している理由もそこにあります。
例えば、長時間、自分に合わない椅子で仕事を行い、身体が不調をきたしている状態では、集中力を維持するだけでも困難になります。そのような環境で働いていれば会社に対して「自分の健康を軽く見ている」というイメージを持つようになるでしょう。結果として、働くモチベーションはどんどん下がっていくはずです。
白組・高橋:確かに、白組のスタッフの間でも、若手を中心に仕事に使う椅子に対してこだわりを持つ向きが増えています。なかには「自腹でもいいので、自分に合った椅子を購入したい」と言ってくるスタッフもいます。ですので、私たちも椅子についていろいろと学び、働く環境の改革に活かしていきたいですね。
Eviro社・伊藤:そう言っていただけると、私たちとしては嬉しいかぎりです。すでにWORKAHOLICのお客さまの中には、従業員の働く満足度を高める施策として、従業員各人に自分に合った椅子をWORKAHOLICで選ばせて購入するという制度を導入されているところもあります。デスクワーカーの健康への意識はそれほど高まっており、それに対応することは従業 員エンゲージメントを高める一手として非常に有効なはずです。
従業員のモチベーションを高める要素